☆「CM」の講演会に行ってきました。
少し前になりますが、日本CM協会主催の「住宅を対象としたCM手法の展開」の講演会に行ってきましたので、少しご紹介をしたと思います。(幾分内容が固いところがありますが、適当に読み飛ばしていただければ、宜しいかと思います)
講師は本間貴史さんという方です。お顔を拝見していてどこかで見たことがあるな?と思っていたところ、紹介の中でテレビにも御出演されていることをきいて「ああ」と思い出しました。今はもう放映されていないようですが、私も好きだった「ビフォーアフター」というリノベをテーマとした番組で出演されていた方だと気づきました。後で調べると「安住空間の探究者」というネーミングの「匠」でした。
現在は、中国にも事務所を開設されて(どうもスタッフは中国の方で、麗しい女性ばかりのようですが…うらやましい)海外でもご活躍されているようです。
☆CMとは?
そもそも「CM」とは何?と思われる方がほとんどだと思います。広告つまりコマーシャルとよく間違われることが多いです。
この講習会のチラシには、CMとは…「コンストラクション・マネジメント(CM)と呼ばれる建築プロジェクトの発注・管理方式です。」との記載があります。
これまでにWTOを契機として国においてもCM方式の研究が行われており2002年に国土交通省から「CM方式活用ガイドライン」が刊行され公共プロジェクトにおいてもCM方式の普及・促進が図られています。
CM業務については、一応その定義づけが明確に定まってはいるようですが、業務が多岐にわたっており複雑です。今回は講習で聞いてきた主に「住宅におけるCM」ということでご紹介したいと思います。
CMの種類
<ピュアCMとアットリスクCM>
CMには、標記の2種類のタイプがあると言われています。
建設工事においては、通常は発注者が設計者と工務店とそれぞれ契約を結ぶか、あるいは、住宅会社などと設計施工一括で契約して住宅を建てることが多いと思います。
これに対してピュアCM方式では、発注者は、CMr(”コンストラクションマネージャー”と呼ばれるCM業務を行う者の事です)と契約を行い、CMrのアドバイスを踏まえて設計者や工務店または専門工事業者と一括、分離、あるいはコストオン方式など各種の発注方式で契約する。
これについては、関係図がわかりやすいと思いますが、著作権の関係でここでは出せません。
また、アットリスクCMは、発注者は、CMrとCM契約及び工事契約を結びCMrが工事契約を行う。
これについては、関係図がわかりやすいと思いますが、著作権の関係でここでは出せません。
検索エンジンで「CM方式」で検索していただければ出てきます。
☆DMとは?
今回の講習会では、小規模住宅におけるCM手法として「DM」を紹介されました。
DMとは、Design&Managementという意味で先に説明したピュアCMと設計を組み合わせた方式です。
発注者は、設計者及び設計者と兼ねるCMrとの業務契約を行い、CMrのアドバイスを踏まえて各専門工事業者と契約をする。
DMの利点
従来の一括発注と比較するとDMの利点は多く以下の通りです。
- コスト構成の透明性の確保
設計図に基づいて作成された積算数量をもとに見積り内容の精査を行うため専門業者の実際上のコストが明確である。 - 発注プロセスの透明性の確保
提出された見積りを比較表に整理し、専門工事業者ごとの見積り額が一覧することができ、専門工事業者の選定を施工能力や人物などの評価をもとに自己で決定することができる。 - 下請け→元請け
専門工事業者とそれぞれ契約するため、一括契約では工務店の下請けとなるが分離発注方式では、それぞれの専門工事業者は、すべて元請けとなり発注者のみからの依頼により工事を行うことができるため自分の意見が直接伝えることができる。
DMの課題
- 様々なリスクへの対応(工事保険、瑕疵担保責任、契約不適合など)
当初予算を超過するリスク、全体工程を超過するリスク、工事中の事故リスク、工事完成後の工事瑕疵に関するリスクなどの低減をどのように行うのか。 - 煩雑な書類、書式の整備
基本・実施設計段階の全体スケジュールの調整、工事発注段階の施工者選定業務、工事段階の各工事業者間の調整・助言や支払管理、工程管理その他のCM業務のボリュームが大きい。(これはCMrが業務として担う) - 発注者・専門業者の理解
分離発注(施主直営方式)を行うことにより一括発注方式において担っていた総合建設業者のリスクは、それぞれ発注者及び専門工事業者に分散されており、施工責任の所在がややあいまいとなる可能性がある。
以上が主な内容でした。
そのほか講習会では、各フェーズ(建築相談~竣工引渡まで)で具体的な業務に従い、書式など具体的な資料を提示しながら各業務の概要の説明がありました。(ここはDM業務の専門的な分野です)
DM業務の印象としては、冒頭に説明されていましたが、工事段階以降の事務処理業務のボリュームがかなり大きく、竣工まで担当者は、息が抜けない日が続く感じがしました。
講習会の最後に本間さんが中国での実績をご紹介されていました。
聞くところによるとひょんなことから中国での仕事をしたことがその後につながっているようです。小規模事務所の海外展開の一事例という感じのご紹介でした。変わった建築事例もありました。
DMまとめ
一般的に一括発注においては、工務店は完成品及び工事に関する瑕疵のリスクを負っています。
建設施工においては、完成までに至るまで様々な業務を行う現場員も必要とします(現場経費として工事費に経費として含まれています)。
また、会社として継続するための経費(一般管理費と言います)も必要とします。
それらは当然、建設費の中に組み込まれるべき経費となります。
一方、DMにおいては、それらの経費のうち元請けの会社を継続するための経費は不要となり、現場を調整する業務の一部は各専門業者とCMrが担うこととなり理論上(実際上も)は経費の削減が行われることとなります。
ただし、完成品に関するリスクは、発注者が担うことになり、工種ごとに分離された施工に伴う責任は各専門工事業者へ分散されることになります。
いわゆるgive&takeです。(CMrはそのリスクを負っていません。工事請負契約は施主と専門工事業者となり建築主が負うことになります。)
分かりにくいですが、発注者がリスクを担うこととそのため一般管理費が不要になることで、明快に経費節減となります。
☆講習会に参加した感想
さて最後にDMの講習に参加して、私の感じたところを少し申上げたいと思います。
これまでの住宅建設事例で感じたことですが、現状では工務店が造る住宅の建設費は、どのようになっているのか非常にわかりにくいということです。
みなさま(住宅のエンドユーザーの方々です)は、住宅を造られる場合は、どのようにされているでしょうか。
もとより家族が住む器であることはもちろんですが、少し前の時代では、住宅をつくることは功成り名を遂げた人のステータスとして造られていた面もあると思います。
その人自身の社会的地位を表したものとして造られていたのではないでしょうか。
今でも棟上げ式にもちを播いて祝うところもあります。
現代では、住宅は車と同様に耐久消費財として建てられ、また購入されているのではないでしょうか。
そうであれば、もう少し家の価値についてよく考えることが必要ではないかと思っています。
車にも様々なグレードがありますよね。
家の価格はよく坪単価いくらという表現がなされていますが、建設を請け負う側はあくまでそれは目安に過ぎないということです。
坪単価いくらというときは工務店は、通常自社で作っているグレードの目安として言っており、ユーザーは、それがどのようなグレード(価値)のものかは、正確には理解していないと思います。
つまりどのような材料を使いどのように施工するかは、ある種、請負会社の意のままとなっているのではないかと思います。
誠実な建設会社では、値段に見合った価値の住宅を提供してくれると思いますが、必ずしもすべてではないと思います。
今回ご紹介したDMという発注方式は、そこに一つの解答を与えてくれるものだと思います。
材料や仕様の明確な設計図に基づきCMrがその専門性で最も経済的で合理的な工事施工者を選定し完成まで導く。
設計図で示された材料や施工仕様のグレード(価値)を正確に反映させた建物をユーザーに届けることができ、また価格に対する高い透明性を確保することができるシステムの一つだと思います。
みなさまも適切なコストで納得のできる家をDMで造ってみませんか。
おわり